第2章 小さな天使を拾う

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第2章 小さな天使を拾う

ゴールデンウィークを目前に控え、クラスの雰囲気は浮つきまくっていた。 新しい環境や人間関係に疲れた者からしてみれば、ようやくゆっくり休める至福のときがきたという思いなのだろう。また、部活動に燃える連中にとっては、仮入部から本入部へと移行して本格的な活動に入る期待感が膨らんでいるようだ。 しかし、ソワソワして落ち着きのない彼らを戒めるかのように、あいにくその日の放課後は曇天に覆われていた。まだ傘こそささずにいられたものの、四月の終わりとは思えないほど肌寒かった。夏服への衣替えを控えた時期だというのに。 僕は図書室の業務を終えると、ドアに施錠をして職員室に鍵を返してから駐輪場に向かった。 ソラさんはゴールデンウィークに全国各地であるトレインフェスタの準備があるとかで、今日は早々に切り上げて帰っていった。あの人は、実は大の鉄道マニアで、鉄道写真を撮る『撮り鉄』かつ、音や動画を収録する『録り鉄』で、さらに乗って楽しむ『乗り鉄』でもある。 一方の月ヶ瀬は、いつも通り閉館時間ギリギリまで指定席で本を読み続け、僕が業務後の当番日誌を書いている間に「お先に」と言って帰っていってしまった。     
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