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第1章 太陽と月の図書室
教室のベランダから名前も知らない女の子に怪しい視線を送ってしまったあと、僕は気配を消すようにしてうつむいたまま、そそくさと図書室に向かった。
今日は図書委員の最初の集まりがあったのだ。
――昼間、クラスで委員会決めがあった際、僕は図書委員に名乗りを上げた。
それぞれの委員が立候補制で、定員より多くの生徒が手を挙げた場合、じゃんけんで決まった。
『はい、じゃあ、次は図書委員やりたい人!』
昨日のオリエンテーションで学級委員長になった男子が進行して、次々と各委員の名前が黒板に記されていく中、図書委員のところでその流れがピタッと止まった。
『だれかいませんかー』
委員長が教室を見渡す。
『おい、お前やれよ』
『イヤだよ、なんで俺が』
『はいはい、こいつを推薦します!』
何人かの男子がふざけあうばかりで一向に挙手する者はいない。
図書委員の任期は一年更新。昼休みと放課後に図書の貸し出し業務がある。よほど奇特な人間でないかぎり、せっかくの休憩時間を拘束されたくはないのだろう。
だからだろうか、そういうことは部活動をしない帰宅部の、ヒマな人間がやろうよという変な雰囲気がクラス中に漂っていた。
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