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ビル群が作り出す無機質な明かりは、行き交う人間さえも無機質にする。果たして自分は人と違う生き方をしてきたのか、そんなことを思わせてしまう。
今日も僕はそんな明かりを背に浴びて、安物のギターで下手くそな歌を歌う。平日の夜、駅前の橋には忙しない足音が響く。帰る場所のある人々は、そこに向かって迷いなく歩き続ける。だが、ごく稀に僕の前で立ち止まり、少しだけ僕の歌を聴き、じっと見つめてくる人もいた。
「へたくそ」
その中の一人が、それだけ言って立ち去った。でもそれでいい。誹謗中傷であれ何であれ、僕の存在がその瞬間浮き彫りになったのだから。
ギターをわざとらしくかき鳴らし、最後の詩を歌う。
「そして空を見上げた、無機質な明かりが星を闇に還した」
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