第1章

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僕は吐息をつき、何年かぶりの自室に入る。 掃除がしっかりとしてあり、ローズのいい香りが仄かに漂う。 「うはっ、いい香りーっ」 「さくちゃんーっお父さんのお話終わったのーっ」 ひょっと顔を出す実の兄聖弥にパタリと資料を閉じて、返事をしょうとするがぎゅぎゅっと返事をする前に抱きつかれる。 タッパがいい兄に抱きつかれるのは即ち、抱き殺されるのに近い。 「うぐっ」 「聖ーっ朔が死にかけてるぞーっ」 僕の異変に気付き、力を緩めてくれる。 ううっ……やっと、息が吸えるうっ。 「……うあーっははーはーっ」 「ーっ、ごめんねっごめんねーっさくちゃん」 聖弥の兄侠弥が心配そうに僕を抱き寄せる。 聖弥と侠弥は双子で一卵性の為にかなり似ていて、見分けがつかない。 国際的人気モデル兼歌手の二人は双子ならではの息が合うハーモニーが人気に拍車をかけている。 「……まったく聖はもっと落ち着きを持て、大体」 「だーもういいわかってる」 「わかってないーっ、お前は」 侠弥兄さんのお説教が始まった、僕はこっそりと部屋から出てリビングに行く、するとカチャリとドアが開く。
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