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好き?もしかしてこいつ、恋をしたのか?それで試合に集中できないのか?いわゆる恋煩いってやつじゃないか。
「おいおい。誰だよ、その相手。俺も知ってるのか?」
「ああ」
「え?誰だろ……」
共通の友人・知人の顔を思い浮かべる。藤堂のタイプにはまりそうな女性を探そうとしたが、考えてみればまだ付き合いは短いのだ。彼の好みがどんなものなのか見当もつかない。そう言えば、球界の中でいろいろな選手の噂話を耳にするが、彼の女性関係の話は聞いたことがなかった。イケメンだし優勝争いをするチームのエースなのだから、モテないはずはないのだが。
「もしかして、有名人とか?」
「まあ、一応そうだな」
「女子アナか?」
「違うよ」
「アイドルか?」
「そんなんじゃない」
「じゃあ誰だよ。全くわからん」
「お前だよ」
「はい?」
「だからお前のことが好きなんだ」
「待て待て。そんな冗談はいいから正直に告白しろ」
「冗談でこんなこと言わないよ」
彼の顔は真剣そのものだ。
「お前のことは、このチームに来る前から気になっていたんだ。それが、同じチームになって、バッテリー組んで、それで、やっと気付いた。俺は、お前のことが好きなんだ」
俺を見る目が熱を帯びていた。
「藤堂。お前そっちの趣味があったのか?」
「実はそうなんだ。ずっと隠してたんだけどね」
道理で女性がらみの噂が出ないはずだ。しかしまいったな。悩みを打ち明けろと言ったものの、こんな展開になるとは想像もしなかった。私生活まで女房役を求められるとは。
困惑していると、彼は不機嫌に眉を寄せる。
「なんだよ。ひいてるのか?」
「違う違う。ちょっと驚いただけだ」
「そうなのか」
安心したよと言って藤堂は梅酒をちびりと一口含んだ。思い起こせば酒の席ではいつも、彼は果実酒やフルーティーなカクテルを好んで飲んでいた。
「で、お前の気持はどうなんだよ?」
悪いと言ったら怒るだろう。彼はチームメイトでありエースだ。この先ギクシャクした関係になるのも面倒くさい。だからっていい返事なんかできるはずもなく、
「あー。すまない。俺にはそういう趣味はないからさ」
「待ってくれよ」と藤堂は血相を変える。
「俺が勇気を出して告白したのに、っていうより、告白させといて、それを無下に断る気なのか?」
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