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エイブの言葉にルゥイは眉を顰めた。
やはり知らなかったのだと、それを見てエイブは思った。無理もないだろう。指名手配の解消はつい三日前の出来事で、その触れは巨大な〈ラ・シン〉国全土に行き渡っていない。国の外れに位置するこの〈カイド〉もそうだ。
だからこそ未だルゥイの首に賞金が掛っていると信じて疑っていない者達に、彼は追われた。指名手配されていると信じているから、彼は逃げた。
魔術と剣の国と呼ばれる〈ラ・シン〉は、〈ラ〉と呼ばれる神を祭る信仰国だ。〈ラ〉の御加護を受けこの国は発展を遂げたのだと言い伝えられ、人々は皆それを信じている。
〈ラ〉の寵愛を受ける「人間」たる国王による絶対王政で、魔導師と剣士で構成される王と国を守る王国親衛隊の天に立つ七賢人によって、その行政補助が行われていた。
現国王のラ・ミラは〈ラ〉の寵愛を一身に受けた〈ラ・ラ―バ(神の最愛)〉と呼ばれている。ミラ王は学識豊かで熱意もあり鋭い閃きを持っていた。
開港し異国民でも立ち寄ることができるようにして〈カイド〉を発展させたのは王が十八になった時であった。そのように行政での才能は若い時から目を見張るものがあり、それゆえ国民からの信頼も厚かった。
だが王の本領はそれ以上に戦の時に発揮された。冷静を越えた冷酷さと、天賦とも呼ぶべき支配欲の強さで隣国を次々と従属させ、今の巨大な〈ラ・シン〉を造った。
ミラ国王の支配願望を実現化したのは〈ラ〉の子と呼ばれ人知を越える力を持つ魔導士と〈ラ〉に忠誠を誓う剣士、そして彼らの盾になる〈シルド〉の存在だった。〈ラ・シン〉の人口はそれほど多くない。
それでも他国を攻めただの一度も負けていないのは、魔術と剣の力が国を支えたからだった。
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