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二年前、ミラ王は正面に対峙する場所に在りながら攻めあぐねていた、〈シルスティン〉への攻撃を決めた。
〈シルスティン〉は銀と鋼の国と呼ばれる通り、それらの金属を他国へ輸出するほどの産出国であり、最も優れた金属加工技術を有していた。その技術を応用して鎧や兜、剣や槍、鉄砲や砲台を製造し、それを扱う戦士軍の規模や練度を最大限に高め、巨大な軍事力を保持していた。
〈ラ・シン〉とほぼ同等の国土を有し、人口はその三倍にも上る。〈ラ・シン〉正規軍三万に対して、〈シルスティン〉は十万の軍隊を持っていた。およそ三倍以上の軍力は〈ラ・ラ―バ〉のミラ王ともいえども攻め込むのを躊躇するほどのものだった。
だが王は、その〈シルスティン〉を従属させると決めた。近隣の小国を攻めることとは訳が違う。戦争は国と国を上げての大戦争になり、王の親衛隊も参加するという異例の総力戦となった。
戦いは一年近く続き、最後には〈シルスティン〉の首都〈イール(烈士の都)〉を奇襲で獲った〈ラ・シン〉が勝利を得た。国民は〈ラ〉の御加護だと王を称えたがその戦いで出した戦死者は、一万人。喜ぶには余りに多い犠牲だった。
〈天と地の大戦争〉と呼ばれたその戦いが終結してから一年、〈ラ・シン〉はようやく傷ついた身体を癒しつつあったが其処此処に戦の爪跡は残っていた。
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