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「俺は今からイザヌに会いに行くんだ。それだけは譲れねぇ。その後でもいいなら、結果は約束できねえが、俺の知り合いに口添えしてやってもいい」
「本当か。その訪問は、時間がかかるのか?」
「会いに行くのはそうかからねえよ。ここから一日もあれば着く。だけど滞在時間がどうなるかはなぁ…ババア次第だが、二日程ってとこか」
「それなら、王国親衛隊入隊試験に間に合うな。そうと決まればすぐ行こう。ここからでも王都まで何日もかかる」
はあぁとルゥイが怪訝な顔でエイブを睨む。冗談だろうと彼女の人格すら否定するような表情だ。エイブは理由がわからずまた不思議そうにしている。なぜこんな言われを受けるのかと腹が立ってもいる。
「もう夜更けだぞ。明日でいいだろ。明日で。俺は眠いんだよ。疲れてるんだよ。繊細なんだ、お前と違ってな」
「善は急げと言うじゃないか。それに追手が来るかもしれないぞ」
「果報は寝て待て。来るもの拒まず。俺は寝る」
そう言うとルゥイは大きく広がった岩肌の上に横になった。すぐに大きな寝息が聞こえる。空腹で倒れた後も一時間ほど寝ていたくせにとエイブは怒りを露わにしたが彼の身体に触れるようなことはしなかった。落ちている小石を蹴飛ばし遠くまで飛ばしている。案外遠くまで飛んだのを見て、彼女は少し気分を良くした。
「ふざけた奴だ…」
エイブの呟きは湿り気を含んだ漆黒の闇に吸い込まれ、消えて行った。
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