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僕は急におばあちゃんのことが心配になった。
「おばあちゃん、どうしたの?」
おばあちゃんは、答えない。
「ねぇ、おばあちゃん。だいじょうぶ?」
なんども呼びかけた。けれど、おばあちゃんはうつむいたままだった。
どうすれば、おばあちゃんは元気になってくれるのかな。どうしたら、おばあちゃんが笑ってくれるのかな。
僕はかんがえた。
僕の元気がないときは、いつも痛いときだった。転んで痛いとき、お腹が痛いとき、僕は笑えなかった。
そうか。おばあちゃんはいまどこか痛いんだ。きっとそうだ。
ぼくは、おばあちゃんのうしろに回った。
「痛いの痛いの飛んでいけ」
それから、ゆっくりとおばあちゃんの丸く曲がった背中をさすった。
「痛いの痛いの飛んでいけ」
痛いとき、よくパパとママがこうしてくれたのを覚えていた。だから、おばあちゃんもこうしてあげたら元気になってくれるはずだ。おばあちゃんの笑っているすがたを想像しながら、背中をさすった。
すると、とつぜん僕をおばあちゃんが抱きしめた。
「……おばあちゃん?」
僕はびっくりして、動けなかった。それから、何度か呼びかけた。けれど、ごめんねと言うばかりで、なにも言ってくれなかった。
僕は困ってしまった。笑ってくれるとおもっていたのに、おばあちゃんはよけい悲しそうな顔になった。
「ごめんね」
そればっかり。
ちっとも笑ってくれないのだ。僕はおばあちゃんを元気にしてあげたかっただけなのに。
その理由が、僕にはぜんぜんわからなかった。
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