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 電車のガタンゴトンという音。  優しい揺れがきもちいい。  となりにおばあちゃんはいないけれど、さみしくなかった。それよりも、家に帰れることがうれしかった。  すこしまえに、おばあちゃんの家を出てきた。おばあちゃんから、家に帰れないって言われたけれど、僕はどうしても家に帰りたかった。ずっと暮らしていたあの家がよかった。  おばあちゃんには、ちかくの山で遊んでくるとウソをついた。昨日みたいな元気のないおばあちゃんはもう見たくない。  どんどん流れていく景色を見つめながら、僕はパパとママのことを考えていた。パパとママはどうしてとつぜん死んでしまったんだろう。僕を驚かせるため? それとも、僕が嫌いになったから?  嫌いになったのなら、そう言ってくれればいいのに。そうしたら、僕もっといい子でいられるように頑張るのに。  電車のアナウンスに聞き耳を立てていると、目的の駅のなまえが聞こえてきた。僕は、電車が止まるのを待ってから、急いでおりた。乗るまえと同じように駅員さんへ声をかけて、わかりやすい地図を描いてもらった。僕にでも、わかるような絵だ。ありがとうとお礼を言った。僕は、すこしくらいパパとママがいなくてもだいじょうぶ。ちゃんとお礼も言えるんだ。  すこしのお金とハンカチと、それから、お気に入りのボール。家まではそんなに遠くなかったし、住所だけは覚えていたからだいじょうぶだった。それに、いろんな人が声をかけてくれたから、さみしくもなかった。  ひとりでも、僕は泣かないんだ。僕はいい子。  パパとママに会ったら、そう教えてあげるんだ。
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