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それから、テレビをつけようとした。なにも映らなかった。
「あれ、なんで?」
コンセントを確認したけど抜けてない。リモコンの乾電池も外れていなかった。へんだ。
僕はどうしてテレビがつかないのかわからなかった。テレビはパパとママが帰ってきてから観ることにした。
家のなかは飽きたので、庭でボール遊びをすることにした。ポーンと高く上げてみては、落ちてくるボールをキャッチする。ときどき失敗して、コロコロと転がってしまうけど、まえよりはずっと上手になった。
パパはいつも僕の練習するようすをそばで見ていてくれていた。
ボールの投げ方とか、キャッチの仕方とか、子どもでもわかるような説明をしてくれた。僕はパパが好きだった。いつも優しく見守ってくれるパパをすごいとおもっていた。
けれど、今はいない。僕、ひとりだ。
しばらくのあいだ、ボール遊びをしたあと、疲れたので芝生に座りこんだ。空がすこしピンク色になっている。時計の針も半周していた。
あと、どれくらい待てばパパとママはかえってくるんだろう。帰ってきたらおばあちゃんに電話してあげないといけない。多分、僕が勝手にいなくなって心配しているだろうから。
パパとママがいなくなってから、おばあちゃんは僕のそばにずっといた。
「おばあちゃんがいるから、だいじょうぶだからね」
そう言って、僕の頭をなでた。おばあちゃんは優しかった。パパとママが死んでから、もっと優しくなった。ママが読んでくれていた絵本を読み聞かせしてくれた。僕の大好きなハンバーグを作ってくれた。大好きなおばあちゃん。
おばあちゃんは昨日どうしてあんな顔をしていたのかな。悲しそうな顔。僕はあの顔が嫌いだった。パパとママが死んだ時、みんなあの顔をしてた。僕はいやだった。
死ぬってなに? かわいそうってどういうこと?
死んでも、また生き返ればいいじゃないか。
なんで、わかってくれないの?
死んだパパと死んだママは、いつ帰ってくるの?
ねぇ。
いつ生きたパパと生きたママに戻るの?
だれかにききたいのに、だれもいない。
ここにいるのは、僕ひとり。
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