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「失恋話だって恋バナは恋バナ、私の大好物ですから。アキノの口から一体どんな暴言が飛び出すのか、楽しみだね!」
……ため息しか出ない。
「そもそも、どうして元カレが行きたいって言ったお店にわざわざ来ようと思ったのか、まずはその心境をお聞かせください」
ぐいっとエアマイクが突き出される。
私はそれを押し返す。
「別に、大した理由はないよ。ただ、カケルがあんなに行きたがっていた店だから、私が先に来たら少しはすっとするかなあと思って」
「なるほど、復讐ですか……」
「メモを取るな、メモを」
「いやあつい、職業病で」
キヨカは両親の営む食堂で給仕をしているのであり、決して記者ではない。メニューが憶えきれずいまだに注文の聞き取りを手書きでやっているというだけの話だ。
「それで、別れた原因はズバリなんですか?」
「ぐいぐい来るなあ……まあ、よくあるケンカだよ。意見のすれ違い」
「なるほど。何がもとで別れるほどの大ゲンカに発展したのでしょう?」
「……くだらなすぎて言いたくない」
「なるほど」と言いながら熱心に手帳に何か書き込んでいるキヨカ。ひったくって見てみれば、「目玉焼き、醤油派?ソース派?」と書かれていた。ちぎってポケットにしまう。
「ああっ、なにするの!」
「さすがにそこまでベタないさかいはしてない」
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