3人が本棚に入れています
本棚に追加
そういうわけで、キヨカには本当のことを言うわけにはいかない。キヨカのせいで別れたとは思われたくないし、あの願掛けが逆効果だったとがっかりさせたくない。信じているほうが恋愛に前向きになれるに決まっている。
「ま、そんなに話したくないならこれ以上聞かないけどさあ……」
むっつりと黙り込んでいる私に、彼女はため息をついた。
「このお守り、やっぱ大した効果はないねー」
と、縁結びのお守りを指に引っかけてくるくる振り回している。……もう信じてないみたいです、神様。
「やめときなさいって。きっとそのうちいい人が見つかるから」
「じゃあ、アキノは?どうしてお参りした翌週にフラれてるの?」
「フラれたんじゃない!ケンカしてお互い嫌になって別れたの」
キヨカはじっとりとした上目遣いでこっちを見ている。
「いいんだよもう。きっと私にふさわしい相手じゃなかったから、神様がやめとけって言ったんだよ。だから今日はたくさん食べて英気を養って、次の恋へのスタートを切るの!」
「うん……そうっすね!」
キヨカはニーッと笑い、私たちは次にどんな人と付き合いたいかという話で盛り上がった。背が高くて、塩顔のイケメンで、仕事ができてお金持ちで、小さいことは気にしないけど細かい気配りはできる人で、色黒で歯並びがよくて、ちょっと天然なところもあるけどそこがまたかわいくて……と、理想像は瞬く間に膨れ上がり、現実から遠のいていった。
最初のコメントを投稿しよう!