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「あー、くっそ……」
隼人はベッドに寝転がりスマホを無造作に置く。毛布を頭まで被り、縮こまる。
「ああもう、くそ。なんであんなの送ったんだ。バカか。俺はバカなのか」
落ち着きのない隼人は、がばっと毛布を剥いでスマホを探し、ロックを解除する。
「勘違いされたよな……いやでも、好きな人がいるっつうのは本当だし」
アドレス帳を開くと、最後に通話したのが五十鈴のため穂先五十鈴という名前が一番上に出てくる。
緑色の通話ボタンを、押すか押すまいか。押せば恐らく、さっきはなんだったんだと問いただされる。だが、五十鈴から電話がかかってくるという雰囲気はない。
「腹くくるしかねえよなあ。当たって砕けろだ、隼人。いくら真面目であろうと俺だって男だ」
アドレス帳の画面から、発信中の画面に切り替わる。そっとスマホを耳に当て、覚悟を決める。もう、戻れないのだ。
『あ、おい、隼人か? さっきのメール、美野里に読んでもらったんだが、あれなんなんだよ。明日、月曜。放課後残れよ。恋の相談とかいうやつにのってやる。ったく、俺のメール嫌いは知ってるくせに……そういう大事なことは、直接言えよな。おい、聞いてるのかよ』
質問やら愚痴やらが一度収まったところで、隼人はやっと声を出した。
「五十鈴。その、言いたい事があるんだよ」
つう、と冷や汗が頬を伝った。
『なんだよ。そろそろ美野里の目線が痛いから、手短に頼むよ』
仕方ないな、といった調子で五十鈴は言う。早く言え。声、出ろ。頼むから。隼人は声を振り絞る。
「俺っ……」
もう、戻れないのだ。
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