余命3ヶ月の花嫁

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消え入りそうな声で夏帆は言った。 「夏帆…… あ、ダメだろ。骨折でもさせたら、大変だ。ご、ごめん、知佳さんから聞いたんだ、骨にも転移してるって」 「まだ痛くないし、骨折したっていいわ。粉々になったって、、私は胸も片方しかなくて気味が悪いと思うけど、一度でいいの、、」 ボロボロに泣きながら訴えた夏帆を強く抱きしめた。 「ごめん、夏帆。君にそんなこと言わせて、悪かった」 泣いていたのは、死への恐怖ではなかったのか。 胸が片方しかないことを気にしていたなんて……。 「気味が悪いなんて思ったことはないよ。夏帆、君はいつだって清らかで、すべてが美しいから」 「修二さん、わたしのこと、、愛してる?」 夏帆のストレートな問いに一瞬、戸惑う。 涙を浮かべて僕を見つめた夏帆のまぶたに、そっとキスをした。 そんな目をして見ないでくれ、夏帆。 君は僕を買いかぶっている。 僕は君のような美しい心など、持ちあわせていないんだ。 こんな僕に恋い焦がれている夏帆が愛おしく、甘くせつない想いに囚われる。 「……愛してるよ、夏帆」 スタンドライトの灯りを消し、白く光る夏帆のシルクのパジャマのボタンを外した。 痛々しくえぐられた胸に唇をよせると、深い哀しみで胸が締め付けられた。 夏帆の死を恐れているのは、夏帆自身より僕のほうかもしれない。 何も考えられなくなり、本当に砕けてしまうほど強く激しく、夏帆をむさぼり求めた。
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