美冬が生まれて

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いつもの手の込んだ夕食を前にして、ムカムカとせりあがってくる吐き気。 深呼吸をひとつして箸を持った。 食欲のない僕のために、あっさりとしたものが用意されている。 夕食は大抵いつも和食だ。 焼き魚か刺身、酢のもの。煮物かおひたしにサラダ。 食欲のない母自身、そんなものしか喉を通らないのだろう。 具だくさんの味噌汁をひと口飲み込み、菜の花のからし味噌和えをつまんだ。 味はもちろん悪くない。健康だったらなら、どんなに美味しいことだろう。 体が受けつけないのに、無理やり流し込むかような食べ方をして、栄養になどなるのだろうかと疑問に思う。 だけど、これ以上痩せ細って心配される方が嫌だった。 ぷりぷりの焼き鮭をご飯にのせ、お茶を注いで無理やりかき込んだ。 「ごちそうさま」 拷問のような夕食を終え、席を立った。
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