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男は、豪華な会場の隅で震えていた。
握るのは携帯電話。画面は暗い。
彼は一通のメールを待っていた。
それは、まだ来ない。
顔を上げる。
目の前には、何十人という外国人達。
彼らは皆、国のトップだ。
談笑の中に自国の益を見出すプロ。国を背負って立つ者。
男もそうだ。日本という国を背負っていた。
臆せず、他国と渡り合ってきた。
自国の政策も固めてきた。
そんな彼の脚は、壊れたようにガタガタと震え、奥歯は噛み締めていないと早すぎるビートを刻む。
額に浮かんだ玉のような汗が顎の先から落ちる。
携帯の画面の上に、二、三滴落ちる。暗い。
「頼むぞ......!あと三十分もない......!」
男は、世界に向けて〈爆弾発言〉を言わされようとしていた。
世界の様相がガラリと変わるまで、もう時間はない。
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