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勉強も、運動も、芸術も、芸能も。
全てが一番だった彼が得ることができなかったもの。得ることはできないと思っていたもの。
「僕だって、誰かの〈一番〉になれたんだ」
彼の手には、折れた覆剣。
▽
「逸れた......?一体なぜ」
浮いた伊吹は呟く。ユウキが何かしたか、それとも。
「ぉぉおおお!!」
背後から、叫び声。
右脚を突き上げたユウキが、烈火を纏った踵落とし。
咄嗟に両手をクロスしてガード。
「くっ......!」
言霊を上方向に噴出。
蹴りと同方向に飛ぶことで威力を殺す。
その時、伊吹が意識を逸らしたせいで光柱が消えた。
ユウキがいたはずのそこに立つ少女と、座る少年。
「ちっ......君か、ヒツジ!」
「よそ見すんなッ!!」
ユウキの拳が、僅かに逸らした伊吹の上体を掠める。
いつの間にかドーム壁面に作られた足場。
立ち上がることもできないナタリアはしかし、壁面に手をつき足場を作り上げた。
「何故そこまでする!何がお前たちをそこまでさせる!使命感か?正義感か?」
「違うッ!」
ユウキの蹴りが伊吹を掠める。
「ではなんだ!〈爆弾発言:『この世界は──」
それは、石板に書かれた予言。
聞き、理解したユウキに衝撃を与え、記憶を爆破。
前三十秒の記憶が飛ぶ。
一瞬できた隙。光の柱がユウキを墜とす。
「ふぅ......。ユウキ、お前は諦めというものを──」
「──知らないね!」
土煙の中、立つユウキ。
真っ直ぐに伊吹を睨み、拳を再び握る。
「......なぜ立つ。なぜ抗う。なぜまだ牙を剥く!お前達は、何を力に戦うんだ!!」
吠える伊吹。対し、笑う六人。
「あなたには、聞こえてないんだよ」
ユウキは、頭部アーマーの無線機を軽く叩く。
「無線......?」
そう。霊層が取り払われた言語世界で、ノイズなく伝わる無線通信。
六人が付けたそれの、向こうから響くは。
『頑張れユウキィ!!!』
『頑張ってユウキ君!!』
『歯ぁ食いしばれお前らァ!!』
『ユウキ!勝ちな!』
『スズリィィ!!立てェェ!!』
『ナッちゃん頑張って!』
『コトハ!閃光弾を試してみろ!』
『回復に専念するんだミコト!』
『アーマー制御は全部外した!行け小僧共!!』
『頑張れ!』
『頑張れェ!!』
『頑張って!』
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