0人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、大きく広げた、白炎の翼。
計四枚の炎翼が、一度空を叩く。
熱風。
その威力はまるで炎龍のよう。
「自身の言霊を消費している......!まさか、本物のキャスターとなったのか!」
遠く離れていても届く熱気を感じながら伊吹が喚いた。
「たとえ活路が途絶えても、決して絶やすな忘れるな。胸に燃ゆる紅蓮の炎、大地を揺らすは烈火の咆哮。聴こえるみんなの『頑張れ』の声が。燃ゆる胸をまだ焦がす!あの日残した父さんの言葉、今響いているみんなの声が!挫けやしない、消せはしない。何度でも立つ〈言動力〉!」
「こんな言葉を知ってるよな!?『守るべきものがある限り、心は決して折れはしない。心が折れない限り、人は何度でも立ち上がれる』ッ!!」
「覚悟しろよ、伊吹さん!あなたと戦うこのオレは、双炎を以って太陽を墜とすッ!決して絶えない焔と思えッ!!!」
口上。ユウキの心の炎と共に、爆発的に上昇する熱。
「知っている......知っているさ!その言葉は、オレとアイツの合言葉だったッ!ユウキ!オレはただ!もうあの地獄を見たくないだけなんだ!!」
降る光柱。ユウキに刺さり、爆発。
防御する動作も見せなかった彼に直撃したそれは、ついにドームの壁を瓦解させ、大量の砂塵を舞いあげる。
崩れ落ちたドームの瓦礫は、他のキャスター達を下敷きに殺したか。そう思う伊吹はしかし、眼下でそれら全てが双炎に吹き飛ばされる映像を見て、それが間違いだと知る。
「効かないよ。あんたの爆弾は、もう!」
「......ッ!!ユウゥキィィッ!!!!」
翼で空を叩き、急上昇するユウキ。
迎え撃つ伊吹、光柱を落とす。
しかし華麗な飛行で避ける。
降り注ぐ幾筋の光を全て避け、伊吹に肉薄。
「はぁぁぁッッ!!!」
ユウキの右ストレートが、クロスした伊吹の両腕に吸い込まれる。
ミシミシと、嫌な音をあげる両腕。
「ぐっ......〈虚構霊装〉ッ!」
纏う白衣が黒く染まり、威力と炎を吸収。
そのまま距離を取るように、黒い軌跡を残して飛ぶ。
「ぅぉおおっ!!」
「ぉぉおおッ!!」
言霊放出で自在に飛ぶ伊吹と、双対の炎翼をはためかせ加速するユウキ。
世界改変の爆弾の下、黒い軌跡を残す伊吹と白赤の軌跡を残すユウキは、何度も激突。
最初のコメントを投稿しよう!