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「墜ちろっ!」
伊吹の指が地を指すと同時、何十メートルという半径の光柱がユウキへと降る。
「ぅうッ!」
受け止めるユウキ。その隙に伊吹は右腕を前へ左手で支え、詠唱を始める。
「技を盗む黒。虚無。零次元からの顕現。一次元を腕とし二次元を盗む。紙面上の技、画面上の術。あの日臆した黒き檻を産め。刻々と濃くなる黒獄、〈懐かしき虚構立方体〉!」
光柱が途絶えたユウキの周囲を囲むように現れる黒い長方形。
連立し、壁となり、それが彼の上下前後左右全てを埋めることで、巨大な黒い立方体となる。
「完全詠唱の〈懐かしき虚構立方体〉だ!中は無限の爆発。いくらお前でも壊せまいッ!!」
そう叫んだ伊吹の眼前で、立方体に入るヒビ。
中から漏れる白光。次第にヒビは大きくなり、そして立方体を完全に砕いた。
「なっ......!?」
砕けた立方体の後に残ったのは、白炎でできた巨大な球。
いや、それは翼を曲げ、身体を包み込むようにしていたユウキ。
展開される双炎の翼。その全長は、赤炎は十メートル程。白炎に到っては五十メートルを超える。
「次で決めるよ。伊吹さん」
翼を背負ったユウキは、右拳を大きく後ろに引き、静止。
勢いのみの、突撃の構え。
「......いいだろう。いいだろう!俺の切り札で、死ななければなッ!!」
伊吹は影に潜って瞬間移動。ユウキと爆弾を結ぶ直線上に浮く。
ユウキは後光の射す彼を、眩しいしかしキッと睨み見る。
「技を盗む黒。虚構。零次元からの顕現。一次元を腕とし二次元を喰らう。紙面上の技、画面上の術。あの日憧れた光の奔流を産め。穿孔する閃光!」
太陽が輝きを増した。最大放射は伊吹の背後から。
明るく輝く太陽の光は、しかし彼を通過し黒に変わる。
「〈懐かしき虚構波〉ッ!!」
「ぉぉぉおおおおおおおおッ!!!!!」
拳を突き出し、愚直なる突進。
今、黒光波と双色炎が宙空で衝突。拮抗。
一方は莫大な熱を放ち、炎を推進力に黒を押す。
また一方は全てを飲み込む黒の波動。太陽の光をもって闇を生む。
「ぬぅぅぉぉぉおおお!!」
「くっ......ぅぅぅううッ!!」
同威力で拮抗状態にあった二人はしかし、次第に黒が押し勝ち始める。
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