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広い教室は妙に寒々としている。段々畑のように並べられた机たちのほとんどは主を持たず、隙間を空けポツリポツリと黒い頭が三本生えるに留まっている。それがまた、何とも言えぬ虚しさを際立たせていた。
擦れたチャイムの音が教室に漏れてくるのと同時に、後ろの扉が開く。立派な白髪を揃えた背広の老人が、首を揺らしながら入ってきた。やおら教壇まで歩みを進めると、その好々爺然とした風貌に似つかわしい優しき声を上げた。ピンマイクが綺麗にその音を拾い上げる。
「どうも皆さん、御機嫌よう」
一番前の席に座っていた、太い眉が凛々しい青年が元気よく答える。
「よろしくお願いします。教授」
その後を追うように、小さな声が二つほど教室を彷徨った。
教授と呼ばれた男は微笑むと、
「本日の講義を始める前に、皆さんにお聞きしたいことがあります」
後ろを向き、黒板に白い線を引く。
「この言葉を知っていますか」
――女子會。
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