第1話 不思議なドールと平凡ネコ好き女子高生

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翌朝、味噌汁を温めるときに感じるだしとみその香りに誘われて起き上がった。猫達はまだ夢の中。 誰が味噌汁作るの? 階段を下りてキッチンを覗くと、要がいた。今はレタス切ってる。アボカドも剥いてる。トマトはドレッシングの入ったボールに切って入ってる。昔母さんが作ってくれたトマトのサラダと同じレシピのように見える。 「おはよう、棗。着替えてから降りてくればいいのに。」 「…おはよう。何してんの?」 「何って?オレは家事支援ロボットだから、朝食づくり。家事しか出来ないから家事してんの。」 「…着替えてくる。」 促されるままに制服に着替え、食卓に着いた。すると暖かいカフェオレが出て来た。一口飲むと甘さもちょうどいい。はちみつで入れてくるのも嬉しい。何もかもが自分の理想通りの朝食で文句のつけようがない。 「はい、出来ました。食べないの?」 「…いただきます。」 「召し上がれ。」 出て来たメニューはコーンとチーズの厚切りトースト、スクランブルエッグ、アボカドとトマトのサラダ、お味噌汁、はちみつカフェオレ。簡素だけど、私の母さんがこっちで生活してた頃の定番メニューだ。 ぼんやりと食べてると、要は次の工程に移ってた。洗濯物を干して、掃除機をかけてゴミ出しして、テレビの今日の占いが始まる頃にちょうど良くかけてくれて、カバンを勝手に開けたと思ったらお弁当と冷やしたお茶を入れてくれた。登校時間には目の前まで送ってくれて…。 「いってらっしゃい。」 「…行ってきます」 何もかもが母さんがいた頃の生活を送ってた。久しぶりに。 不思議な感覚。母さんはシンガポールにいるのに。
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