守るべき場所

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深い森の中・・・ 入っていくと奥に、泉がある。 誰もいない、隔離されて空間・・・ 私はこの静かな空間が好き・・・ まるで、絵本の世界にでも、入り混んだかのようなこの空間・・・ 妖精や、小人が、出てきそうな・・・ この空間が好きだ・・・ 誰も知らない、私だけの場所・・・ ・・・そう思っていたのだけれど・・・ この場所には、私と同じくらいの年頃の男の子がいた・・・ 滅多に会うことはないが、たまにはち合わせる事がある・・・ でも、彼を気にかける事はなかった・・・ 彼も私に気づいてはいるが、声を掛けてくる事はなかった・・・ 「互いに干渉しないこと」 暗黙のルールになっていた・・・ だけど・・・ ある日、いつものようのその場所に行くと、彼がいた・・・ しばらく見なかったが、久しぶりに鉢合わせをしたようだ・・・ 彼とはなるべく距離を置き、泉を眺めていたのだが、 その時に、空が泣きだした。 予報で「雨が降る」とは聞いていたが、予想以上だった・・・ 傘は持っていなかった・・・ (しばらく続くわね・・・) その時に彼が私の方へ来た・・・ 「・・・どうぞ・・・」 小さい折りたたみの傘を差し出してくれた・・・ 断ろうとしたが、彼は動かない。 私は、ありがたく借りる事にし、 「ありがとう・・・」 傘を受け取った・・・ 彼は黙ってうなずくと、走って行った・・・ 私は、ずぶぬれになりながら、去っていく彼を見送った・・・ この泉には、一本の道しかない。 彼も私が、行き来している道を去っていく。 (傘は次にあった時に返そう) そう思っていたが、その後、彼と会う事は、なかった・・・ ただ、後日傘を乾かしていた時に、一枚のメモが挟まっているのに気がついた。 そこには、こう書かれていた。 「ここを、守って・・・君に託します」
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