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A「はぁ~…一面のパウダースノー……写真部の合宿、雪国にしてよかったね」
パシャパシャと自分を取り巻く周囲の景色をレンズに収めた後、メガネを白く曇らせ、口元に手を当てて寒そうに息をしながら彼女は言った。
A「こんな景色、わたし、初めてだよ」
B「ああ、俺もだよ……」
いたく感動した様子で呟く彼女に、俺もそう答えて頷く。
いや、 頷くのだったが……。
A「でも、すっかり体冷えちゃったし、早く宿帰って温泉入ろ?」
B「おい、いい加減、現実逃避はやめて、さっさとこの小麦粉なんとかしろ」
なおも三文芝居を演じ続ける彼女に俺は冷たくツッコミを入れた。
A「えぇ~こんなの一人じゃ無理だよお。お好み焼きパーリーしようって言ったの部長のあなたなんだから、連帯責任ってことで一緒に片付けてよ?」
B「どうしてそうなる!? 小麦粉の袋開けた瞬間、コント並に大仰なくしゃみして部室中にぶちまけたのはおまえだろ! 演劇部から借りてる小道具の木も粉塗れだし、どんだけドジっ子だよ!」
自分のありえない失態を棚にあげ、責任転嫁しようとする彼女に俺は声を荒げる
A「だってぇ、あまりにパウダースノー過ぎて鼻がむずむずしたんだもん……そうだ! この雪片づけるついでに雪だるま作ろう?」
B「だから現実逃避はやめろ」
あくまでもこれを雪だと言い張ろうとする彼女に、俺はもう一度、冷めた目をしてツッコミを入れた。
(パウダースノー 了)
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