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ピアノから始まるイントロ。メインのテーマを2オクターブ高いところで弾く。4小節後ドラムが入り同じテーマを今度は中音域で奏でる。
展開部で対位法的な旋律の掛け合いが交差し中世のクラシック音楽を匂わせつつも、ドラムの猛烈なビートが楽曲を前に押し進め古臭さを感じさせないように工夫してある。
本当ならバンドサウンドがやりたかった。
悲鳴のように唸るエレキギターにシャープで図太いベース。
全身を掻き毟るような扇情的なボーカルに荒々しくもタイトなドラムス。
だけど現状メンバーは俺とイーサン二人だけだし俺のギターの腕もまだ発展途上で人前で演奏できるレベルにはない。
苦肉の策で編み出したピアノとドラムによるゲリラライブだったけどオーディエンスの反応はまずまずといったところだ。続々と半円形舞台を取り囲むように人だかりが出来始めている。
4曲目の途中で騒ぎを聞きつけた守衛がこちらにやってきた。
まあ予定通り、むしろここまで演奏できたのはラッキーかな。
「今日はここまでだな」
俺とイーサンは目配せして楽器の撤収にかかる。
ほどなくして守衛に学生IDを提示させられ俺たち二人は学務室に呼ばれたのは言うまでもない。
だけどこの時蒔いた種が数日後にちゃんと芽吹いて俺たち5人を引き合わせ、ミレニアム音楽同好会を結成する事になるんだからやっぱり行動こそ正義なんだよね。
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