allegro

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ゲリラライブから2日後の金曜日の昼休み。 俺とイーサンはまだ立ち上がってもいない同好会の暫定的な溜まり場として、大学構内の最も北側に位置する研究棟の休憩スペースを勝手に占拠していた。 「やっぱりこの動画、惹きが弱いよねぇ」 休憩スペースのソファに座りながらぼやくイーサン。動画は同好会のメンバー募集のために製作した1分弱のもの。スタジオで撮った演奏風景がシャッフルされ、あい間あい間に今の時代にロックすることの難しさとやりがいが黒地に白のテロップで差し挟まれるドキュメンタリー風に仕上がっている。 「編集したのはクラウドAIサービスのキャスパーだからな。俺は素材を投げただけだ、文句はキャスパーに言ってくれ」 「ドキュメンタリー風にしろって依頼を出したのは彼方だろ?やっぱり2000年代のミュージックヴィデオ風に仕上げた方が直感的に訴えるものがあるんじゃないかな?」 「今のご時世に『あ!2000年代のMV風でカッコイイ!』って言ってホイホイやってくる奴がいるか?いいかイーサン、俺たちはそもそも啓蒙をしていかなければいけないんだ。それも単なる懐古主義に陥らず、反骨精神の本質を正しく行動に示さなければならないんだよ。ベーシックインカムとAIによる自動資産運用サービスで寝ぼけた老人たちに冷や水をぶっかけるべくロックしなければならない。Don't trust over thirtyage的な」 「っておい、ロックに年齢は関係ないだろ。だいたい平均寿命が100歳を超えた今の時代と60歳くらいで老人扱いされてた昔とじゃ訳が違う」 「俺が言ってるのはあくまで精神論的な意味で」 などと二人でやりあっていたら新入生らしき人物が会話に割って入ってきた。 「あの、すみません。ミレニアム音楽研究会の方ですよね?」
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