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「君、もしかして入会希望?」
色白で淡白な目鼻立ちにおそらく地毛であろう金色の髪。男にしては丸みのある頬を少し紅潮させながら、線の細い肩にかけたギターケースを下ろして喋り出す。
「羽山彼方さんですよね!?キャンパスアリーナでの演奏見てました。あれオリジナルですか?凄い格好よかったです!なんていうか、自分の語彙力ではうまく表現できないんですが初期衝動みたいなのがよく出ていて見ていて興奮しました!それで学内の掲示板に上がってたお二人の動画を見て ”バンドやってるんだ” ってなって、あ、自分ベース弾くんです」
一息に言い終えると置いていたケースからベースを取り出してストラップを肩にかける。手の位置や適度な脱力からしておそらく楽器経験者だとわかる。
俺は顔のニヤつきを堪えつつ同好会のリーダーたる品格を失わないように心がけて話す。
「嬉しいな、早速同志に会えるなんて。改めて自己紹介させてもらうよ。俺は羽山彼方。今年入学したばかりの1年です。キャンパスアリーナでのライブではピアノを弾いてたけど今ギターを練習していて、いずれギター&ヴォーカルでバンドがやりたいと思ってます。そしてこっちのおっさんがイーサン、ドラムを叩かされてるよ」
「おい、彼方!年上なんだからもっと気を遣えよ!あと君はテンションが上がると軽口になるな。あー、改めて、イーサン・ファインです。彼方と同じ1年だけど社会人枠で入ってるから年はちょっと上かな。彼方とは入学前のオリエンテーションで出会ってお互いに楽器をやっているっていうんで意気投合してね。専攻は経済学」
「その情報いらなくない?もっとこうさぁ、尊敬するドラマーとか、、」
と、これ以上イーサンに絡んでいる場合ではない。
俺は空気を読みつつベースを構えた入部希望者の方を向く。
「お二人とも仲がいいんですね。いいなぁ。僕はテオ・ミルズと言います。情報工学部の2年なんですけどあまり仲の良い友達がいなくて。ロックが好きな人も周りにあまりいなくて、大学入ったらバンドをやろうと思っていたんですけど何も行動に移せないまま1年過ぎちゃって」
侘しさと焦燥が同居したような複雑な微笑みを湛えてベースを爪弾く。
「まだ1年が過ぎただけじゃないですか!大丈夫です、これからよろしくお願いします」
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