はじめに

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気ないと思い、前々から気になっていたメニューを注文する。その名もホットレッド。どこの国の何て料理だか知らないが、名前の発する異様な雰囲気が、あまりにも気になっていた。ひょっとして、辛いのだろうか。  少し待つ。すると鉄板に、揚げてあると思われる大きな肉が乗ったものが来た。ソースはこれは、何だろう。ケチャップよりソース色、だがどちらの匂いもしない気がする。付け合わせにはスパゲッティ、インゲンを茹でたもの、そしてフライドポテト。いい匂い。ライスも運ばれて来て、準備は整う。  ようやく慣れてきたフォークとナイフで大きく切る。すると、中からチーズが溢れてきた。益々ヨダレを誘うそれ。食う。熱い。するとその食い物は、僕の中で何かの扉を開いた。  ──何っっだこれッ。  まず、チーズを平たい豚肉二枚で挟んである。そして、衣をつけて揚げてある。ソースは、やっぱり何が使われているのか分からないが、美味しい何かが掛かっている。辛みは全くない。付け合わせのスパゲッティなんて、どうしてこんなに美味いのか。インゲンがまた合う。飯が進む。  カチカチと音を立てるナイフ。米粒が皿に引っ付いて、ああ全く腹立たしい。がっつきたい。謎の肉料理は、新たな刺客として僕の前に立ちふさがる。ボリュームも大変問題なし。ポテトは塩を練り込んだのかってくらいにしょっぱいが、元来塩分が好きな僕には、好敵手として相応しい。  コーヒーを飲み干し、ふわふわとした足取りで会計へ向かう。金を出しながら、僕は首を傾げていた。結局今日のところ、僕は勝ったのか? 負けたのか? 手書きの伝票にはなぜかホットンと書かれていたが、この人自分の店のメニューを覚えてないのか?  カランと鐘を鳴らしながら、ただぼんやりと店を出る。丁度、ラジオから「あの鐘を鳴らすのは君だ」が流れていた。鳴らしたってしょうがない。僕はどうせ、また悩みながらここに来るしかない。  かくして僕は、リボンでの新たな敵を増やしていった。  仕事の面で言えば、皆が煙たがる営業を必死でこなしている内に昇給したり、年月が経って先輩になったりしていた。田舎の客は相変わらずだが、まぁ月日が経とうと僕の闘志は相変わらずだ。  次はいつだ。いつ向かえばいい、田舎の客め。チキンカツ、オムライス、ナポリタン、いやしかしホットンか。一体どいつから片付ければいい。  リボンへは、休日に友人を連れて行っ
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