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なだれ込むように椅子に座った依里ちゃんのコートを脱がせてから、冷たいウーロン茶を一杯差し出すと、ありがと、と言ってごくごく喉を鳴らしてあっと言う間に飲み干した。
「ごめんね、連絡もしないで」
「いいよ。ご飯はカレーだから、明日食べなよ」
「……そうする」
早く帰った方が夕食を作るっていうルール。でも、高校生の私の方が早いことが多く、週に四日は私の担当になっている。普段、会社の飲み会の時とかは前もって教えてくれるんだけど、この「ベロンベロン」の時だけはいつも連絡がない。
テーブルに突っ伏せた依里ちゃんの顔はメイクが剥がれ落ち、目の周りはパンダになっている。
「お風呂無理でしょ? メイクだけ落としてもう寝たら」
クレンジングを取りに行こうと立ち上がると、依里ちゃんは突っ伏せたまま「ごめんねえ」とつぶやいた。
「はい、持ってきたよ。自分でできる? 私がやろうか?」
するとむっくりと起き上がって頭を数回ぶんぶんと振った。
「大丈夫。あたしやる」
コットンで少し乱暴に拭い取る様子を見ながら、私は黙って座っている。そろそろいつものやつが始まるころだ。
「舞ちゃん、いつもありがとねえ。舞ちゃんがいないと私はもう生きていけないよ」
――ほら、きた。
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