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「そして空を見上げた。空は私の心を映すかのように灰色の雲に覆われていた。」
私はその二文を書いてため息をついた。手はそこで止まってしまっている。
事の発端は部長の一言だった。「今回の文芸部季刊誌のテーマは空にします!」
それから各々がどのような空を取り上げるか話し合いをし、私は曇を担当することになった。
もっと晴れとか雨とか分かりやすいものを選んでいれば……と今さら後悔しても時すでに遅し。
私は最後の二文だけ書き上げてしまった。
ここから終わりに向けてどのようにストーリーを展開させていこうか……。
そもそも登場人物も何も決まっていない。決まっているのはテーマと最後の二文のみ。
私はあまり回転してくれない頭をシャーペンの先でコツコツと叩きながら、フッと窓の外を見た。
空はあまりにも晴れている。
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