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頭を下げ返したものの、なぜ会社の人がここに? と?マークが頭の上を飛びまくる。
「もうバレてるんなら、ちゃんと紹介しとこうと思って。私がお付き合いしてるの、この人やねん。この子もすごく懐いてて、再婚してもええよって」
愕然とする俺に、息子が嬉しそうに言う。
「この前、鈴木さんに変化球教えてもろてんで!」
「そ、そっか。よ、よかったな」
その後、交替でキャッチボールをしたが、俺は下手くそ過ぎて、息子を走らせるだけだった。
ピクニックシートに座って眺めていると、妻と息子、鈴木さんはどこからどうみても家族だ。すごく幸せそうで、俺の出番はなさそうだった。
妻と息子、鈴木さんと別れた俺はピクニックシートを担いだまま、バーのドアを開けた。
「マスター、ありがとう。ほんまに晴れたわ!」
「――所により、大雨、だったんですね」
「え? なんのこと?」
聞き返すと、マスターは黙っておしぼりをいくつかと箱ティッシュを俺の前に置いてくれた。
「……ありがとう」
俺は『大雨』を止めるため、熱いおしぼりを目に押し当てた。 (終)
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