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翌朝、エクエスは台所から聞こえてくる調理の音と美味しそうな匂いで目を覚ました。
(……あれ?)
まだろくに陽も昇りきっていない時間帯で、普段なら両親もまだ眠っているはずなのだが……。
起き抜けの頭で不思議に思いながら、眠い目を擦りつつエクエスが台所に足を運ぶと、誰かが調理台の前で食材を刻んでいた。
「……お母さん?」
「え?」
眠たげなエクエスの呼び掛けに、背中を向けて包丁を扱っていた誰か……いや、エプロン姿のテトラが不思議そうな顔で振り返った。
「……え?」
目を丸くする彼女の顔を見て、同じようにまん丸の目を更に丸くするエクエス。
一瞬の沈黙。そして数秒の思考停止を挟んだ後、ようやく状況を理解した彼は顔を赤くしながら慌てて口を開く。
「お、お姉ちゃん? 何やってるの?」
「何って、見ての通り朝食の準備を……」
ぱちくりと瞬きしつつ、テトラは調理台と、それから近くのテーブルの上へと目を移した。
釣られてエクエスがそちらを見やると、テーブルには既に料理が何品か並べられていた。
鶏肉と色とりどりの豆の入った野菜スープ、ふかふかに焼かれたパン、それから豆腐のハンバーグ。一目で手が込んでいると分かる料理が家族の人数分、美味しそうに湯気を立てている。
「……その、悪いが食材は勝手に使わせてもらったよ」
「それはいいけど……お姉ちゃん、昨日色々あったんだからさ、今日はゆっくり休んでればよかったのに」
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