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「もー、リリーまで」
友人の言葉に苦笑気味に、けれど少し照れた様子で返事をするクララに、まるで小さな頃から彼女の成長を見守って来た近所のおじさんみたいな表情と共に、羊人族の少女はペラペラと続ける。
「だって本当のことだよー? 見た目はもちろんだけど、性格も人当たりもいいし、なにより笑顔が可愛いよねー。お客の水夫さん達じゃないけど、時間さえあればずっと眺めてたいなー」
「もー」
両手の指を組みながら、おそらく心からであろう言葉を送ってくるリリーに、クララはますます赤くなる顔を木製のトレイで隠しながら、「リリーだって可愛いでしょう?」と返すが、
「やー。あたしはちやほやされるより、ちやほやされるクララを眺めてにやにやしたい人だからー」
などとよく分からないことを口にして、あっさりとクララの反撃を煙に巻いてしまう。
飄々と掴みどころの無い友人の態度に、『海猫亭』の看板娘が本日大盤振る舞いの「もー」を繰り出して、周りの客や店員が温かな雰囲気に包まれる……。
……そんな中、
「……でもさー、あたしは心配だなー」
ふと、リリーが肩を竦めて言った。
「?」
頭上に疑問符を浮かべ、小首を傾げるクララに、羊人族の少女はこう続けた。
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