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ほーっと息を吐いた少女は木に体を預けてへたり込みました。
乱暴をされた王子は無事でしょうか。
少女は柔らかい土の上に手をついて彼らの様子を覗き見ました。
翼を折りたたんだ竜は血を流す王子を覗き込みました。竜の瞳が潤んでいき、やがてぽたりぽたりと金色に輝く涙を零しました。
すると王子の体についた傷がみるみるうちに塞がり治っていきました。
竜の涙はどんな病や傷をも治す妙薬だという言い伝えは本当なのだと少女は驚きました。
そうして竜はいつもよりもいっとう優しく寄り添って、王子の頬を二つに裂けた舌で舐めました。
その時、少女は竜が王子のことを心の底から愛しているのだということを知ったのです。
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