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少女はブーツを履いて部屋を飛び出しました。
階段を駆け下りると母親手作りのクロスがかけられた机の上に父親のカンテラが置いてありました。
それをひったくり、薄い寝間着のワンピースのまま裏口から家を出ました。
ワンピースが翻り、草木を散らしていきます。
少女はカンテラを片手に夜の森を駆け抜けました。
夜の森は大変暗くとてもおどろおどろしい雰囲気に満ち満ちていましたが少女にはそれを恐怖する暇すらありませんでした。
あの王子と竜が焼き殺されてしまう。
少女にはそちらの方が恐ろしかったのです。
昼間に目印にしていた木も鳥やリスの巣も何も見えません。
それでも少女の小さなブーツは何かに導かれるようにして銀の茨の元へとやって来ました。
少女は乾いて冷たくなった喉をこくりと飲んで足を止めました。
夜の暗闇の中に淡く光る銀色の茨。そこに竜はいませんでした。
少女は足を進め初めて目の前から茨に近づいていきました。
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