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目も眩むような光の中、誰かが身を起こしました。
「有難う、金の竜よ。眠っていてもお前の存在は感じていた」
低く通るその声はとても美しいものでした。
光がおさまるとそこにあった銀の茨は消えていて、ひとりの青年が立っていました。
「長かった、もうどれほどの月日が経ったのかもわかりはしない。お前のおかげで呪いは解けた」
初めて開かれたその瞳は神と同じ銀色をしていました。青年は身を屈めた竜の顔を優しく撫でました。
「誰かが俺のことを心の底から愛し…このおぞましい茨にも怯むことなく口付けを交わしてくれたら呪いが解けるようになっていた」
そんなことが出来る人間はいやしません。何故なら彼に触れようとするものならば茨が容赦なく突き刺さるからです。しかし竜の鱗はとても固く、鋼より固く鋭い銀の茨でもものともしなかったのです。
金の竜は銀の王子を長い眠りから目覚めさせたのでした。
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