銀の王子と金の竜

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大きく広がるふたつの翼。鋭い爪の生えた足。全身を覆い尽くす金色の鱗。 それは一匹の竜でした。 王子の体を纏う茨は鉄よりも固く、刃よりも鋭く、誰も触ることはできません。 でも彼はそんな茨もものともせずに王子に触れられる存在でした。 どこから来ていつ王子を見つけたのか。 いつからそうするようになったのか、何もわかりません。 ただわかるのはその金の竜は毎日王子の元へとやってくるということです。 時には花を摘んだり、どこかの輝石を咥えてきたり。 それを王子の傍らに置くと、いつも決まったように銀の茨を掻き分けて彼の胸元にそっと顔を寄せるのでした。 そして一人と一匹のその姿を見ているものがいました。 それは王子のいる深い森を抜けた先にある小さな村の少女です。 少女はおさげにした赤毛を揺らし、今日も王子と竜の様子を見守るように眺めています。
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