銀の王子と金の竜

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不思議なことに銀の茨がある場所だけ木が生えていません。 他の木々はまるでその場所を取り囲むようにして、王子のいる所にだけ空からの光が当たっていました。 暫く木陰からじっと王子の姿を見ていた少女でしたが、何かが近づいてくることに気が付きました。 ぽっかり空いた森の穴に、ばさりと音を立てて何かが降り立ちました。 金の竜です。 竜を生まれて初めて見た少女は思わず小さな悲鳴をあげましたが、それはすぐに感嘆の溜息へと変わりました。 その竜がきらきらと輝く金の鱗を纏っていたからです。 竜は何をするでも無く銀の茨に寄り添うと、その中に顔を差し込んで王子の胸元に擦り寄せました。 銀色の王子と金色の竜。そのふたつが寄り添う空間そのものがが宝石のように見えました。 少女はこんなにも美しい光景があるのかということに感動し、毎日のように忍んでは王子と竜を眺めているのでした。
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