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その日は少しばかり曇り空の日でした。
いつものように籠を片手に果実を摘みにきた少女は森の中の獣道を早足で歩きました。
目前にはぼんやりとあの茨の光が見えてきた――その時少女は大きな木の影に小さな体を隠しました。
少女が見たのは王子に寄り添う金の竜ではありませんでした。
そこには王子を物珍しげに眺めている自分以外の人間、数人の男達が立っていたのです。
男達は揃いも揃って大柄で、ナイフや猟銃を持ち、野蛮そうな見た目をしていました。
その時少女は、森の中にはまれに獣を狩りにならずものが入り込んで来ることがあるので奥へ行ってはいけないという父親との約束を思い出しました。
少女は気づかれないようにそっと近づいていきました。
男達は王子の姿を見て何かを話しているようです。
何だかその瞳にはとても嫌なものを感じました。
少女はまだ両手の指の数にも満たないほど幼く、男達の下卑た思惑は何もわかりませんでした。
それでも彼らが王子に良くないことをしようとしていることだけはわかりました。
すると、男達ががさがさの野蛮な手を伸ばしました。
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