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男達は王子の体に触れようとしますが複雑に絡み合った銀の茨は固く、古びたナイフなどでは傷ひとつ付きません。
その時、少女があっと口の中で悲鳴をあげました。
男達が無理に王子の体を引っ張ったのです。
彼らの腕は茨で傷つきましたが、王子にはそれ以上に傷がつきました。
王子の白い肌に茨の棘が刺さり傷口からルビーのような血を滴らせました。少女は指先を震わせて胸元で両手を組みました。
このままでは王子が死んでしまいます。
――金の竜、はやく来て。
必死に願いましたが竜は来てくれません。
とうとう王子の凛々しい顔に一筋の傷がつきました。
それに気づいた少女が意を決して、足元に転がる石の礫を握り構えた時でした。
ごうと大きな音を立てて森の中に風が吹き荒れました。
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