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暗室
どうしてこんなことに……
少女は暗闇の中で自分の置かれた状況について思いを巡らせていた。
身体中、打ち身や擦り傷、火傷だらけだが、手当をしてもらえない。
せめて横になりたいのだが両手首を縛られ天井から吊されているため、座ることすら不可能だ。
それでも今はいい、この闇の中には自分しかいない。
自分を傷つける者は誰もいない。
孤独がこれほど安らかだとは今まで思わなかった。
この時間が永遠に続いて欲しい……
そう祈りたいがそれも少女には許されなかった。
なぜなら、彼女が祈るべき相手が今の状況を望んだからだ。
だが淡い期待を抱いてしまう。
窓がなく光が一切入らないこの部屋は静寂と闇が支配し、時間が止まっているのではないかと錯覚を起こす。
実際、彼女の時間の感覚は麻痺していた。
目を閉じても開いても変わらない闇、すでに自分は死んでいるのではないか、そんな気さえしてくる。
今まで散々いたぶられて死んでいても不思議ではない、死は怖れではなく救いだ。
だから彼女は己の死を望んでいた。
ギィーッと扉が開く音がして、部屋に光が差し込んだ。
ああ、自分はまだ生きている。そして、また始まる……
地獄は終わってはいない。
少女は己の速やかな死だけは祈らせて欲しいと思った。
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