メンインブラックなお見合い

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****** 「おい、渚。……なんか、疲れてねー?」 翌日。夜勤中の休憩時間に、太っちょの同僚、谷崎純太(たにざきじゅんた)が話しかけてきた。 谷崎の隣には尾形と坂口もいる。 ちなみに尾形はベトナム人とのハーフで、坂口は高校でグレて中退し、社長に拾われた男だ。 「あ、そーいやー聞いてくれよー! ひっどいめにあってさー」 笑い話のつもりで、昨日の見合いのことを話してみた。頭は悪いが気のいい仲間たちに、そんなのありえねーと笑いとばしてほしかったのだが。 「……へぇ。タニヤマ産業って言ったら、一流企業じゃん」 「こんな仕事、辞められるんじゃねーの、渚?」 「しかも親公認だしなー」 「いや、お前ら。ちょっーと待てよ」 慌てて渚は割り込んだ。三人とも、思い思いに休憩しながら、眠そうな顔で見上げてくる。 「相手は男だぞ? 聞いてなかったのか?」 「いや聞いてたけど、別に俺らお前がそっち系のやつでも、ケンケンはねーし」 「ケンケン?」 「あ! 知ってる! ししししし.....ってやつ?」 「それを言うなら偏見だろ? だから俺はそっち系じゃねーって!」 「でも悪いやつじゃなかった、って」 「う……」 言葉につまった。たしかに二人きりになって、話してみた時に思ったけど、エリート特有の他人を見下す感じもなかったし、渚の仕事内容も知っていたが馬鹿にするようなそぶりもなかった。
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