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「おい、渚。……なんか、疲れてねー?」
翌日。夜勤中の休憩時間に、太っちょの同僚、谷崎純太が話しかけてきた。
谷崎の隣には尾形と坂口もいる。
ちなみに尾形はベトナム人とのハーフで、坂口は高校でグレて中退し、社長に拾われた男だ。
「あ、そーいやー聞いてくれよー! ひっどいめにあってさー」
笑い話のつもりで、昨日の見合いのことを話してみた。頭は悪いが気のいい仲間たちに、そんなのありえねーと笑いとばしてほしかったのだが。
「……へぇ。タニヤマ産業って言ったら、一流企業じゃん」
「こんな仕事、辞められるんじゃねーの、渚?」
「しかも親公認だしなー」
「いや、お前ら。ちょっーと待てよ」
慌てて渚は割り込んだ。三人とも、思い思いに休憩しながら、眠そうな顔で見上げてくる。
「相手は男だぞ? 聞いてなかったのか?」
「いや聞いてたけど、別に俺らお前がそっち系のやつでも、ケンケンはねーし」
「ケンケン?」
「あ! 知ってる! ししししし.....ってやつ?」
「それを言うなら偏見だろ? だから俺はそっち系じゃねーって!」
「でも悪いやつじゃなかった、って」
「う……」
言葉につまった。たしかに二人きりになって、話してみた時に思ったけど、エリート特有の他人を見下す感じもなかったし、渚の仕事内容も知っていたが馬鹿にするようなそぶりもなかった。
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