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「でもおかしーよなぁ。そんな奴、女の子が放っておかない気がするのにな」
「そいつも男が好きなのか?」
「いや、そんなことは言ってなかった気はするな。つーか、そいつもって何だよ! おれもちがうからな!」
叫んだ瞬間、司の顔が浮かんだ。
『それがわかるのはこれからかな』
あの時の司の表情。
鋭いとも言える奥二重の瞳を細めて、探るように渚を見つめてきた。
その瞳になぜかドキッとしたのは、仲間たちには絶対に秘密だ。
「まあでも、そんなに嫌いじゃないんなら、もっかいくらい会ってみれば?」
「そんでうまくいったら、女の子紹介してくれるよーに頼んでくれよ」
「あ!お前らそれが目当てか! つーか俺だって、女を紹介してほしいわ!!」
怒鳴りながら、冷めた缶コーヒーを一気飲みした。
砂糖の甘さがやけに舌に残る。
言われなくても、もう一回会う約束をしてしまっていたけど、みんなにはそのことは言えなかった。
今度、同じ映画を見に行こうとしていたことがわかった時、「一緒に行く?」と司に言われたのだ。
断るのもアレなので引き受けたけど、それは本当に映画を見たかっただけで、決してもう一度会いたかったわけではない。
深い意味はない。
ない、はずだ。
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