四季折々

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「ごめんなさい・・・・・・」  ハルはしょぼくれたようにどんどんマフラーに埋まっていった。眼鏡が曇って表情が解らなくなったところで、俺は肩をすくめた。 ・・・・・・俺も人のこと、言えないんだけど。 「今年は、俺が長く居座るよ。そうすればナツが急がなくて済むし、・・・・・・お前もフユを追いかけられるじゃん。雪が溶けたら行っちまいな」  首の後ろをポリリと引っ掻くでもしないと、ばつの悪さを隠せなかった。ハルが眉を困らせて俺を見上げてくるからだ。その表情に溜まらなくなって、「あんだよ、」とつい悪態をついた。 「・・・・・・でも、私と冬くんはいたちごっこなの。冬くんは秋ちゃんと一緒にいることが多くて、私とはあまり一緒にいてくれないから・・・・・・」 「そらぁ寒い季節同士、仲もいいさ」 反らした視線を戻して盗み見ると、ハルはまたしょぼくれていた。きゅっとカメラを抱きしめる姿がいじらしくて、思わず抱きしめたくなる。が、他人になびいた女にちょっかいは出せないっていうことで。 「じゃぁ、今後、冬に言っておいてやるよ、来年は長く居座れってさ。雪と桜が見たいから、とか言っておく 「え?」 「俺は”季節”じゃなくて、”天気”だからさ。冬にけしかけて雪を降らすことくらいできる」  に、と歯を見せて笑ってやると、ハルもようやく笑った。 「ありがとうアメくん」  そう言って微笑んだ彼女はあまりに暖かで、花畑を撫でる風のようだった。  春の季節を終える頃、ハルは夏を待てずに慌ただしく去って行く。俺は嬉しそうに走り出すハルの背中を見送った。冬を追いかけていくのだろう。 俺が彼女に会うのは来年になる。  毎年、毎年、俺はこの季節に失恋をする。  何が悲しくって泣かないといけないのか。ただ、泣いて泣いて仕方が無かった。  急ぎすぎた春のポストを繋ぐように、俺は毎年泣いている。夏がやってくるその時まで。  四季とは春夏秋冬を指す言葉であり、ここに梅雨を含むことは無い。
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