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その瞬間、船が大きく傾いて助手は机の角にしこたま頭をぶつけてしまった。
「助手くん。こら。まだ話は終わっとらんぞ──って気絶してしまったのか、情けない」
これだから近頃の若者は、と博士は屈み込んで助手の顔を眺めながら、ブツブツと文句を並べる。
ギギギ……ゴゴゴ……。
そんな博士の耳に、何かの軋む音、何か流れ込んでくる大きな音がはいってくる。
船はもう一度大きく傾いた。
「むぅ……これはいかん。とても怖い。──ワシも気絶しよう」
そう言い残して、博士は助手をクッションにするように、その上に倒れ込んだ。
哀れ、世界に著名な昆虫博士であるH博士とその助手を乗せたボロ船は大海の荒波に飲まれてしまった。
そのニュースは瞬く間に世間に広まり、彼らの安否の確認はとれないまま数日が過ぎる。
H博士の運命や、如何に。
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