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「着いたぞ。」
肩を揺すられてうすく目を開けると、ぼやけたキャンパスの最寄りのバス停が映る。素直に行きたくないと思った。まだこの景色の中で、微睡んでいたかった。
「も…すこし… 」
起こそうとする彼に逆らって再び目を閉じる。すると太ももの内側をちりっとした激痛が走った。
「いたいいたいっ!!!ひどいっ!」
あまりの痛みにびっくりして目を開け、横にいる湊の方を見る。湊はやれやれと言った顔でアキの太ももの内側をつねっていた。跡がつかない程度の力で。
いくらなんでもこれはひどい。そこをつねるのは反則だ。痛いじゃないか。
抗議を言うために口を開きかけると、その前に湊がロックを解除した。
「十分寝ただろ。一限まであと15分だぞ。」
「わわっ!!」
抗議も忘れて慌てて外に出て駆け出そうとすると、窓から出てきた湊の手がアキの右手を掴んで一旦動きを止めた。
「忘れ物。」
そう言って左手に握らされたのは弁当入りのバスケット。ああ、いけない。忘れていた。
「ありがとっ!行ってきます。」
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