第5章 大学生活。

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「それで、湊さんにどきどきしててさっきの表情?」 1、2限が無事に終わって、あとは4限だけだ。3限は空いているのでアキはその時間と昼の時間をいつも青柳と過ごす。 「…ああ。 もちろん勘違いなことはわかってるんだけど。」 青柳は湊のことも、アキが湊に恋心を抱いていることも知っている。湊を好きだと思い始めて悩んでいた時、なぜか青柳はそれを言い当てたからだった。結局他に相談できる相手もいないのでずるずると相談してしまっている。 「だよな。てか、これはすでに息子扱いだろ笑 どんだけ息子を溺愛するんだか。」 青柳が苦笑いして指差す先には、湊の作った弁当がある。今日の主食はバケットで、切れ目を入れて焼いたベーコンとチーズ、レタスが挟まっていた。 さらに海老マヨ、人参、レタス、大根などが入ったサラダに、スープポットには温かいコンソメスープまで入っている。 買い食いという言葉があるが、湊の料理を食べているとそれ以外のものを食べたくなくなってしまう。確かにもうお母さんと言うべきか…。 「うん。美味しい。」 息子と言われた言葉に、これから恋愛関係になることを否定されたみたいで悲しい。でもその通りだと思うので、アキは明後日の方向の返答をする。 本当に美味しい。サンドイッチは冷めてもベーコンの旨味をレタスとチーズが引き立てているし、バケットは大好物。 湊は食べる頃にはそれが意味をなさないことを知っていても、作る時必ずバケットをこんがりと焼いてくれている。それゆえの香ばしさが、アキは好きだった。 寒い日に野菜たっぷりのコンソメスープはじんわりとしみわたる。ふっと吐いた息はスープの温かさを含んで白くなった。
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