第5章 大学生活。

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「湊さんなんてやめて、俺にしとけばいいのに。」 向かいに座って自作の弁当を食べている青柳が、唇に笑みを浮かべながらアキにつげる。それはいつものことで、本気なのか冗談なのかさえもアキにはわからなかった。 冗談ならば迷惑すぎるし、本気なら困ってしまう。そんな思考を巡らせて困るアキを見て楽しんでいるだけなのかもしれない。 「湊は俺の恋人にはならないよ。俺に興味がないから。」 だから、いつも青柳の言葉を無視してこう返す。同情でするキス、甲斐甲斐しく焼いてくれる世話、それは全てただ同居人に対しての情けなのだから。 「だろうな。」 湊のことを言い終わると、今度は他愛のない会話をする。これもいつものことだ。 「アッキーは今日の合コン本当に来ないの?」 「…湊が4限が終わったら迎えに来るから。」 「もういっそ断れよ!今時高校生だってそれは嫌がるって!」 「俺は嫌じゃない。」 「はいはいごちそうさまでした!」 湊に世話を焼かれるのはむしろ嬉しい。なぜただの同居人にそこまでするのかは謎だが、湊はアキが望む限りずっとこのまま一緒にいてくれると言ってくれる。
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