第5章 大学生活。

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帰りの車では学校であったことについて湊に話す。湊は小説の題材になるからと、どの話も真剣に面白そうに聞いてくれる。ただ、たまにやけに突っかかるポイントがあった。 ちなみに今アキはそのポイントに見事に引っかかってしまったようである。 「だいたいアキに合コンはまだ早い。だいいち何で帰る気だ?」 ちなみに発端は青柳が合コンに誘ってきたことを伝えたことだ。 「電車で…?」 「電車はまだだめだ。」 「じゃあ歩き… って、だから、断ったって!」 「いや、今話したってことはいずれ行きたいってことだろう?まだ早い。」 …やけに突っかかるな。 心の中でため息をつきながら、アキはこの話題を終わらせようと別の話題を考える。かといって今日は実験があったわけでもなく、話をそらせるような内容の出来事は起こらなかった。 「…はいはい。あ、それより今日青柳がカップケーキを作ってくれたんだ。美味しかった。」 必死に考えてひねり出しても、これ以上の話題は見つからない。 「…ふーん。美味しかった?」 「うん。」 湊の返事はそっけない。何か間違えただろうか、と考えるも、何も思い当たらなかった。そのまま長い沈黙が流れる。あまりの気まずさに、ぎゅっと目を閉じた。 湊の気持ちがわからない。なぜ、自分にこんなにも執着するのだろう、と思う。 彼にとってただの同居人である自分にどうしてここまでするのか。せめてその対価を過去の自分が払っていたかどうかくらいは知りたかった。 信号待ち、アキが完全に寝ていると思ったのか、不意に湊の手がほおをなぞるのを感じた。 突然のことに驚きながらもそのまま寝ているふりをする。心地いい。でもくすぐったい。いっそ起きてその手を掴んでしまおうか。 しかしその幸せは彼の発した一言により掻き消される。 「…っ、アキト…。」 何かを噛みしめるような、そんな悲痛な声だった。思わず泣きそうになったる。それを隠そうとしてアキは寝返りを打つふりをして彼から顔を背けた。 どこかわからない深い部分が、たまらなく痛かった。 アキの本名はアキトだが、アキは一度も湊にそう呼ばれたことがない。
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