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第6章 思い出旅行
湊の仕事に特定の休日はない。あるのは決められた締め切りだけだ。だから湊は時折アキの休みに合わせて今日は休みだと言って外出する。
土曜日の今日は、その日のようだ。土日なのに朝9時に起こされ着替えろと言われたから、まだ眠い。朝食をとりながら不満を言うと湊はアキのたっぷりと寝てむくんだ顔を見て言て十分寝ただろうと苦笑いする。
「ほら、機嫌直せ。何か好きなもの淹れてやるから。」
笑われてふてくされているアキに湊は餌を提示してくる。どうしたらアキが機嫌を直すのか。そういうアキの扱い方について湊は聡い。アキはいつも取扱説明書に沿って手のひらでコロコロ転がされている気がしている。
「じゃあホットチョコレート。」
「りょーかい。」
湊の手に簡単に乗るのも嫌だったので、一番面倒くさいものを選んだ。なかなか作ってくれないので飲めることが嬉しい。
…あれ、やっぱり完全に手の内?
考えるのはやめておこう。
洋服に飛ばないように黒いエプロンをして、手鍋にかけたたっぷりのミルクにチョコレートを入れ、ミニホイッパーでかき混ぜる。
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